リスボンに一泊後、ポルト、コインブラなどを訪れ、五日目、ロカ岬を経由してリスボンに戻り、六日目に市街を歩いた。
旅行の途中で印象深い光景に出会った。しかし、ここはそれを残す場ではないので省くが、ロカ岬(Cabo da Roca)、ユーラシア大陸最西端の岬から見た大西洋の風景は記しておきたい。
ロカ岬から眺める大西洋 |
しばらくの間、海を眺めた。水平線はかすかに弧を描いている。ユーラシア大陸の東の果てに住む者として、この風景の果てにアメリカ大陸があり、その果ての果てに、再びユーラシアの極東の地がある、そのような感慨にとらわれた。
カモンイスの碑文 |
Onde a terra se acaba e o mar começa
ここに地終わり海始まる
この場に立つと、「地」が終わるという感覚が何となく伝わる。「海」は始まるというよりも、海の「果て」がただただ広がっている、その途方もなさを感じる。
この後、ロカ岬からシントラを経由してリスボンへ。夕方になったが、夏の街はまだまだ明るい。
エドゥアルド7世公園の展望台から眺める。中央に立つのはポンバル侯爵の像と円柱。その向こう側が中心街。そしてテージョ川。大西洋へと流れていく。
うす曇りのせいか日差しは強くない。暑さもそれほどでもない。美しい風景が広がる。
リスボン。フェルナンド・ペソアの街だ。
ペソアがリスボンを描いた詩を探した。『ポルトガルの海―フェルナンド・ペソア詩選』(池上岑夫訳、彩流社1985/09)の中に、ペソアの異名、アルヴァロ・デ・カンポス (Álvaro de Campos)の詩『Lisbon Revisited (1923)』があった。その一部を、原詩の該当箇所(ネット上のペソア・アーカイブから添付)と共に引いて、この頁を閉じたい。
Ó céu azul — o mesmo da minha infância —
Eterna verdade vazia e perfeita!
Ó macio Tejo ancestral e mudo,
Pequena verdade onde o céu se reflete!
Ó mágoa revisitada, Lisboa de outrora de hoje!
Nada me dais, nada me tirais, nada sois que eu me sinta.
青い空—子供の頃とかわらぬ空—
虚ろにして完璧なる永遠の真実よ
遠い昔から黙して流れる優しいテージョ川
空を映す小さな真実よ
ふたたびおれの訪れた苦悩 昔にかわらぬ現在のリスボンよ
お前はなにもくれぬ 奪わぬ お前は無なるもの そしてそれこそ
おれの感じているおれだ
( 池上岑夫訳 )
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