2025年9月3日水曜日

「こうふ亀屋座」の空間/11月3日の会(太宰治「走れメロス」独り芝居 他)

 この春、甲府城跡(舞鶴城公園)の南側エリアに、歴史文化交流施設「こうふ亀屋座」と交流広場、江戸の町並みをイメージした飲食と物販の店が集まる「小江戸甲府花小路」がオープンした。

 11月3日(月・祝日)午後2時から「こうふ亀屋座」の演芸場で、〈甲府 文と芸の会〉主催の「講座・朗読・芝居の会」を開催する。横浜から招く有馬眞胤(アリママサタネ)さんの太宰治「走れメロス」独り芝居、エイコさんの「新樹の言葉」朗読と「走れメロス」下座の津軽三味線、前座として私のミニ講座が予定されている。

 有馬さんは劇団四季出身で舞台を中心に活動してきた。蜷川幸雄演出作品に20年間参加し海外でも公演した経験豊かな実力派の役者である。彼の独り芝居は、朗読ではなく一篇の小説を全て覚えて声と身体で演じる。文学作品の語りの新しいスタイルを探究している独自性がある。

(この会は無料ですが、事前の申込みが必要です。その詳細は来週お知らせします)

 

「こうふ亀屋座」

交流広場から見た「こうふ亀屋座」




 この会の準備のために先日、演芸場の舞台や客席、プロジェクターや照明の設備を実際に見てきた。江戸時代の芝居小屋を再現したデザインと木材をふんだんに利用した内装が美しい。一階と二階に席がある。120人ほどが定員のこじんまりとした空間ではあるが、木の香りが漂い、すがすがしくなる場だ。独り芝居の舞台としては最高のものだろう。


客席から舞台へ

舞台から客席へ

 この「こうふ亀屋座」は、江戸時代に甲府にあった芝居小屋「亀屋座」をイメージして建設された。 

 演劇研究者の木村涼氏は論文「八代目市川團十郎と甲州亀屋座興行」(早稲田大学リポジトリ)で〈亀屋座は明和二年(一七六五)創設の芝居小屋で、時代を代表する名優が出演している芝居小屋である〉として、七代目と八代目市川團十郎、五代目松本幸四郎、三代目坂東三津五郎、五代目岩井半四郎などが一座を率いて芝居を上演したと述べている。

 江戸時代、甲府で流行った芝居は江戸でも流行ると言われていた。山梨は徳川幕府の直轄領であり、甲府城の周辺には甲府勤番の武士が住んでいた。芝居を見る目が優れた人が甲府には多いという定評があったようだ。

 「亀屋座」は甲府の中心街から少し南に下った現在の若松町にあった。「こうふ亀屋座」は元の場所とは異なるところに建てられたのは、この小屋の演芸場で様々なイベントを実施して、このエリアを人々の集いの場にするためだろう。

 「小江戸甲府花小路」の小路には、食べ物屋、甘味処、カフェ、お土産屋などの店舗がある。小路の向こう側には「甲府城跡」(舞鶴城とも呼ばれる)の石垣や展望台が見える。近くには「舞鶴城公園」もある。甲府の中心街はかなりさびれてきたが、この江戸情緒の街並みや芝居小屋は新しい拠点となる。

 このエリアから南に下ると、移転して再オープンした「岡島」やいろいろな飲食店や商店が続いている。この一帯が中心街の散策コースとしてとても綺麗な空間になってきたのが、甲府市民としてはとても喜ばしい。 


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