ページ

2017年1月20日金曜日

1月26日(木) 「思考と表現のデザイン」教育のフォーラム

 1月26日(木)、山梨英和大学主催で「思考と表現のデザイン」教育-高大接続教育フォーラムが開催される。

 2012年から、甲府城西高校と山梨英和大学は連携して「思考と表現のデザイン」教育を実施してきた。大学側は小菅健一山梨英和大学副学長・教授、高校側は私が中心になって企画し運営してきた。その五年間の成果をふまえて、高校と大学そして社会が「思考力と表現力」を育成するために何をなすべきかという課題について話し合うフォーラムであり、私も報告者として参加する。

 私は、前回紹介した『変わる!高校国語の新しい理論と実践―「資質・能力」の確実な育成をめざして』所収の実践に基づいて、「思考シートによる構造化」授業の試みについて報告する。対立する二項とその統合という三項関係による思考を「思考シート」というワークシートによって図示、可視化することによって思考を構造化していく授業の方法である。生徒は、俵万智の随筆や志村正彦の『桜の季節』の言葉の世界をこの思考の方法によって分析した。30分程度の時間しかないので簡潔な報告となるが、フォーラムという場で参加者からのご意見をいただきたいと考えている。

 国語の授業では一貫して「考える力」「言葉で表現する力」の育成をテーマとしてきた。教材についても、ドキュメンタリー番組、映画やその脚本など教科書にはないものや視聴覚資料も取り入れてきた。志村正彦・フジファブリックの歌と歌詞、日本語ロックの作品を教材にしたのもその流れである。また、思考の構造化という方法への関心は大学生の頃にさかのぼる。
 
 80年代の初頭だった。私の通っていた大学の文学部ではジャック・デリダやロマン・ヤコブソンの研究者がいて、記号論や構造主義、脱構築やフランス現代思想が全盛の時代だった。バルトの研究家・翻訳家であった沢崎浩平先生が講師として来ていたことから「ロラン・バルトを読む会」という読書会が発足した。その会で小管健一さんと知り合った。沢崎先生のやむをえない事情により読書会は数回で終わってしまったが、今でも会場の喫茶店でバルトを語る先生の眼差しや仕草、ふっとつぶやかれた言葉が頭に浮かんでくる。

 ネットで久しぶりに「沢崎浩平」の名を検索してみると、内田樹氏が沢崎先生の思い出話を書いていた。(内田樹の研究室「エージェル」)二人は都立大の同僚だった。この話にある通り、沢崎先生は穏やかで実直でありながらどこか茶目っ気もある方だった。Hegel、エージェル、ヘーゲル。音の戯れがおかしい。

 小管さんも私も日本文学専攻だったが、バルトに興味を持ったのはあの時代の背景がある。二十年ほど前、小菅さんが山梨英和大学に赴任され、ある時に講演会を依頼したことで再び交流が始まった。そして五年前から、私の勤務校と高大連携の授業を始めることになった。「思考と表現のデザイン」というコンセプトは小菅さんの提案である。バルトのテクスト論の音調がどこかで響いている気がする。

 このblogの題名「偶景web」は、沢崎幸平訳のロラン・バルト『偶景』から借りたものであることは以前書いた。このblogに書くことも、教師としての仕事で取り組んでいることも、様々な意味で1980年代前半の「知」に影響されていることに思い至る。
 
 甲府近郊にお住まいの方で最近の国語教育や高大接続のあり方について関心のある方はぜひお越しください。1月20日締め切りとありますが、席にはかなりの余裕があるので、まだ申し込みが可能だということです。当日参加も大丈夫のようです。詳しいことは山梨英和大学のHPでご確認ください。

0 件のコメント:

コメントを投稿